女の子につれさらわれそうになりました

 突然、手をつかまれました。
 なんだと思って手のほうを見ると、まだ少女とも言えないような女の子が
 ぎゅっと僕の右手をにぎりしめていました。
 まったく面識もなく、理由がわからず困惑していると
 その女の子は大きな瞳で僕をみつめながら口を開きました。


 「おにぃちゃん……」


 上目遣いで僕を見つめる女の子を目にして
 いよいよ僕の頭は完全にパニックになりました。
 状況が把握できない。
 なぜ見ず知らずの女の子が、突然僕の手を……?
 困惑している僕の手をにぎってた手に力がくわわりました。
 右手が身体から引き離されて、女の子のほうへ向かっていきます。
 ずるっと、身体が引きずられるようにして滑り出しました。
 たまらず声がもれます。


 「え、ちょっとタイム、ひっぱったらダメだって」
 「こっちきて」
 「こっち ? な、なんで」
 「いっしょにきて」
 「何かあったの ? お母さんは ?」


 言葉をかわしている間にも、女の子は僕の手をぐいぐいとひっぱっていきます。
 ひっぱられる手と一緒に、足もつられていって、身体ごと移動させられていきました。
 大きなリボンにツインテール、ピンクの洋服、僕の手を引く幼い女の子……
 考えても何がなんだかわからない。
 さすがに引きづられっぱなしというわけにもいかず
 足に力をいれて止まってみると、それでも女の子は僕をひっぱっていこうとしました。


 「きてくれなきゃやだ〜」
 「あかんてば、どこつれてくん」
 「こっち、こっち」
 「だーーー、だめやって」
 「うふふ、ふふふ」


 僕は夢でも見ているのだろうか。
 夢だとすれば、この手に感じるぬくもりはなんだ。
 いままさに目の前で起こっているこの非現実的な状況、それはまぎれもなく現実だ。

 (中略……すみません、ちょっと用事がはいったので、また後ほど書き足します)


 あの子はいったい、なんだったんだろう。