取材後記・生還えみごんライブ VIII 愛のテーマ〜空と海と残された大地と呪われし姫君と私と私とあなた〜「愛・覚えていますか ?」(ナゲーヨ)感動巨編

原作:後藤真希雄、脚色・演出:中の人
出演:劇団わんのみなさんと、赤い三倍速の人希望


※この物語はフィクションです。
 実際の人物・施設、および現実のものとは
 いっさい関係がありません。
※苦情は最寄の郵便局か銀行にてお振込みください。




事のほったんは「トトロが居ない! トトロどこ、どこぉ〜?」と、
エミゴンがうめいたことからはじまった。


トトロというのは、スタジオジブリの映画
となりのトトロ』に登場するトロールの一種である。
トトロが居なくなってしまって、エミゴンが困っていたので、
みんなで手分けして探す事になった。


ひょんなことから「どらむ」というライブハウスに
今月 25 日の 19 時、トトロ(キロロじゃない)が居るという
信用のおけない未確認情報をネットの掲示板から入手したので、
その日に現場へ突入する事にした。


現地に着き、薄暗い階段を下ると、そこは思ったよりも広い空間だった。
トトロはここをねぐらにしててもおかしくないと、はっきりと悟った。
薄暗い殺伐とした空気が漂う中、みんなは明らかに殺気を感じていた。
いつケチャがはじまってもおかしくない。
ライブは真剣勝負だ。
Qoo か食われか、刹那の一睨みでそれは決まる。
ステージに立つものが一瞬でも気を抜けば、
観客席からは怒涛のようなダッシュケチャが飛んだっておかしくない。


それに、いつ、トトロが現れ攻撃してくるかわからない。
僕たちは、いつでも迎撃出来るように、カメラを構えていた。
その時であった!
「(ギャル風の語尾が間延びした口調で)あ〜それとぉ、え〜撮影・録音は〜
 禁止なのでぇ、よろしくぅーお願いぃします〜ぅ」
少女がマイクを駆使して警戒体制をしいている。
彼女も、トトロを探しにきた人なのだろうか。


気がつくと段々とあたりが暗くなってきた。
そんな時は、いつも行動を共にしている PDA が頼りだ。
バックライトの光りを頼りに、スタイラスで冷静に状況を記録し続けた。


その時、凄まじい音と光の洪水が襲った。
これからの戦いを盛り上げる儀式が、今まさに始まろうとしていたのだ。
少女たちは踊りながら詠唱をはじめた。
観客たちも我先にと、背面ケチャを繰り広げる。
ステージ中央の魔方陣から、何かを召還しようというのか。
僕はその光景に思わず息をのんだ。
理性を総動員して、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
サイリウムなんてふることはできなかった。
あれがヲタ芸、ロミオというものなのか、前方の白い奴は化け物か。


しばらくして、突然、烈火のごとくに
エミゴン(怪獣じゃないもん)が現れた!
エミゴン(タカサゴンぢゃないよ)も三曲ほど歌を披露して
僕たちをを楽しませてくれた。
そして、彼女は言った。


「いまから、重大発表をしま〜すぅっ !!!」


僕はすかさず、持っていたカメラで迎撃した。
不意の大ダメージを受ける事は避けられたが、
かなり精神的に揺さぶられてしまった。
燦然と重大発表が告知された。
日々のエミゴンの努力と、僕たちの我慢が
いつか実を結び、果てない波が
ちゃんと止まりますように。
そして、僕は思わず声援を送っていた。


「すごい!おめでとう!!!」


戦いは終わった……
トトロは現れることはなかったが、
ほんとに今日は来てよかったと、誰もが思ったに違いない。
僕はそう信じたい。
連れの者は、次回も必ず死なずに参加してみせると、
二回分の通行手形を買って行った。
勇ましかった。
豪腕 StrongARM(SA-1110 / 206 MHz) のようだった。
決意した人の表情は、こうも美しいものなのか。
自分は次回のデッド・オア・アライブには、生きて参加出来るかは判らない。
しかして誓いながら、帰途に着くのであった。
トトロは、いつか必ず仕留めてやる。
それが、あの人の望みだからだ。