小さな旅

　用事がすんで帰ろうと思ったところ
　急に走りたくなって、イージーライダーのハンドルを反対に切った。
　青山を抜けて、有栖川宮記念公園へ行った。
　丘陵を活かした立体的な様子で、写真を撮ったら面白そうだと思った。
　いったん六本木ヒルズまで戻り、さくら坂公園へ行った。
　斜面にそったすべり台と、ロボットのオブジェが印象的だった。
　それからまたクランクを回して防衛庁跡地まで行くと
　意外と近いところにあって、何年後かにここに巨大なビルが
　建つのだとだと思って、すこし物思いにふけった。
　檜町公園に寄ると池があり、木々の隙間から
　そびえたつ森タワーがみえた。　
　アークヒルズを目指して進むと赤坂にでて TBS のビックハットをみた。
　オレンジだ、明日は晴れだ。
　アークヒルズのカラヤン広場の様子をみて、隣の泉ガーデンタワーをみる。
　エスカレーターの美しさと谷のようにぽっかりとした
　地下広場をみては、その光景に息をのんだ。
　またイージーライダーを滑らせた。
　隣の城山ヒルズへ行って、ここでも写真を撮りたいと思った。
　テレビ東京を抜けて、愛宕ヒルズへ行く。
　巨大建築物が好きなので、下からみるのもいいのだけれど
　できれば展望室を開放してほしいと思う。
　レストランがあるようなので、一度利用してみたい。
　坂道を進むと東京タワーがあやしいほどに美しい輝きを放っていて
　麓までいってみる。
　東京タワーにはまだ通常展望台までしか登ったことがない。
　特別展望室にも近いうちに登りたい。
　風の影響で特別展望台から夜景を撮るには難しいときいた。
　いつかカメラを買ったら、夜景撮りに挑戦してみたい。
　芝公園を抜けて、汐留へ行った。
　JRA のあるほうはまだ開発途中でガランとしていた。
　日テレビルのほうへ行くと、女性の 3 人組みが歩いていたのが見えた。
　電通本社ビルまで行って、Pocket LOOX を取り出して
　きょうイージーライダーで走ったところをメモしていると
　「すみません」と声をかけられた。
　さっき見た女性の 3 人組だ。
　道をきかれてのだか、中国から来た人たちのようで言葉がかわらない。
　片言の英語で話したり、紙に字を書いたりして道案内をした。
　それから、お台場まで行ってレインボーブリッジを見たかったけれど
　さすがに帰ることにした。
　銀座を抜けて丸ビルまで行くとイージーライダーが止まっているのを見た。
　僕が今まさにのっているイージーライダーとまったく同じブルーモデルだった。
　何もパーツなどはつけていないようで、購入直後のシンプルな構成だった。
　どんな人が乗っているのだろう。
　どこまで走るのだろう。
　そんなことを思いながら、もう一台のイージーライダーへ別れを告げて、僕らは帰路についた。
　さっき声をかけてきた女性たちは無事目的地につけただろうか。
　言葉も違う国まで自分達だけで行くという壮大さ
　僕にとって何気ない場所も彼女達にとっては
　すべてが珍しい冒険の世界なのだと思う。
　そんな彼女たちがうらやましくもあり、尊敬の念さえ覚える。
　はるばるこんなところまで来たあの旅の人たちに
　どうか幸多きことを。

　走行距離 : 92.88 km
　最高速度 : 37.8 km/h
　今月積算 : 652.10 km