コンピューターと、PDA 、カタログや書類、からまった電源ケーブル
部屋干しの洗濯物、ピンクのカーテンから差込む淡い光。
レンジも冷蔵庫すらならない。
生活感がるようで、生活の臭いがしない部屋。
電話がなる。
君がビニール袋をぶらさげながら
ドアを空けてはいってくる。
いつもの第一声は「また寝てたの ?」だ。
声が乾燥した部屋に響く。
ビニール袋から、一食分のお弁当と飲み物を取り出す。
君の二言目。
「これ、ぼくの。あげないよ」
僕は顔を洗って歯を磨く。
ひととおり済むと君の三言目。
「おなかいっぱいだから、あげる」
僕は半分も残っている食べかけのオムライスを食べて、
ちっとも減っていない飲みかけのミルクティーを飲む。
四言目。
「たべたから、ねむくなった」
横になって目をつむる君。


自転車をかついで階段をあがる。
鍵をとりだして、ドアに挿す。
鍵を回すと音がする。
ノブを回してドアをあける。
「ただいま」
家にはいり、自転車をおく。
荷物を降ろすと、起動しっぱなしの
パソコンの画面をみてはマウスを動かし
クリックしてキーボードを打つ。
ポットのお湯でインスタントのソースやきそばをつくる。
フタをあけると、中に子袋がはいっていて何かかいてある。
とりあえず全部あけて、お湯を注ぐ。
お湯をいれたらしばらく待つように言われていたので
とりあえずネットでもしながら待つ。
ふと部屋の中をみまわすとソースやきそばがあって
お湯をいれていたことを忘れていたことに気づいて
流しにお湯をすてにいく。
黒い液体が流れて行って流し台がボンとなった。
フタを全部剥してみると、なんだかやきそばなのに
白くてふくれあがっている。
「いただきます」
誰にいってるんだろう。
食べてみると味が薄い、食感もヘンな気がする。
作り方を失敗したのだと気づく。
部屋には時計の針の音とファンの音だけが
響きわたっている。
散らかる一方で片付かない部屋。
君がいないと何もできない僕。
どうして君がでていくさよならの訳が
僕のためなの。
そんなの優しすぎるよ。
あんなに一緒にいたいって言ってたのに。
あんなに一緒だったのに。
どうやって歩けばいい。
どうやって生きればいい。
起きるのは、眠るのは、息は……
どうすればいい。
わからなくなる。