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きっとあれは桜の精だったのだと思う。
帰り道、ふとなぜか僕は小金井公園にたどり着いた。
いつもは通過してしまう場所であるのに
なぜかきょうは寄らずにはいられない気持になり
イージーライダーのハンドルを大きく切った。
はじめて踏み入る公園、地図ではとても大きく
江戸東京建物園を内包する東西に横たわるじつに巨大な公園だ。
夜景サイトでは桜のライトアップ情報が
ここ小金井公園のものもあったけれど
それももう終わってしまった。
見上げれば桜もその艶やかな花びらを散らして
新芽が息づいている。
かまわず僕はシャッターを切る。
星さえも見えない暗闇の中、
街灯に照らされ淡く咲き残った花びらの命が尊い。
散り急ぐ季節に咲く花が儚い。
それは舞い散る夢のように。
革命家は自らを人柱として捧げるのが世のならわしだという。
夜桜の神秘的な雰囲気が僕にとってはたまらない。
はじめて見たのはいつの頃だろう。
街道沿いに咲いていた一本の桜、ライトに照らされて
桜の色がぽーと闇夜に、そこだけが優しくて優しくて
ただ僕はたちつくした。
園内をイージーライダーでポタリングしていると
もう深夜も 2 時だというのに花見客をみつけた。
それからしばらく散策していると
遠くから声をかけられた。
声のするほうを向くと、白い服を来た女の子の二人づれがいた。
僕がきょとんとしていると、手招きするように僕を呼んでいた。
僕は女性が怖い。
以前ははじめて会った人だというのに、気がつくとその人の家にいて、眠っていたことがあった。
別にふたりともお酒を飲んでいたわけじゃないのに、僕はお持ち帰りされてしまった。
電話にでれば、あまい吐息がして、僕の声をきかせろという。
身体をつなげても、僕の心には虚無感ばかりがあって、いつも女性は土足で入り込んでくる。
僕の身体が目当てだったのだろうか。
また僕は……
僕は気づかないふりをして、クランクを強く蹴った。
ふたりが見えなくなると、僕は桜の木の下にいた。
なぜ逃げ出したのか、自分でもよくわからない。
あのまま答えていれば、楽しい時間が過ごせたのかもしれない。
僕は夜桜を見上げる。
桜、桜、桜……
こんな夜中にひとり、桜は寂しくないのだろうか。
悲しくて花びらを散らすの ?
寂しくて泣いているのかい ?
一緒にいることより、ひとりでいることを僕は選んだのに。
傷つけてしまうだけだから、僕はいなくなってあげたのに。
もう淋しくなんかないのに。
どうしてそんなに散り急ぐの ?
待ってはくれないの ?
永遠なんてなかったの ?
小金井公園を抜けると、暗い中にぽつんと明かりがあって
そこには自動販売機があった。
僕はコーヒーとココアを買った。
なぜだか言い残したことがあるように思った。
まだいるだろうか……
こんな闇の中を走る僕をみつけてくれた人
声をかけてくれたんじゃないか。
イージーライダーを反転させると僕は夜桜を横切って
さっき声をかけてくれた白い服の女の子たちの姿をさがした。
一言いいたかった。
ふたりがいた場所にはもう影さえない。
園内をイージーライダーで駆ける。
右に左に、夜桜を探した。
いない。
ここにはいない。あそこにもいない。そこにもいない。
いない。いない。いない。
もう、どこにもいない。
いないよ。
いなくなってしまったんだね……
ライトアップされている桜の付近をいくら捜しても
ふたりの姿はみつからなかった。
僕は再び小金井公園を後にする。
星ひとつ見えない闇の中、夜桜と月だけが静かにその姿をたたえていた。
舞い散る花びらの中、僕はイージーライダーと共に風を切る。
そっと心を置き去りにしたまま。
愛する者への想いを。
僕は心をあげたかったのだ。
家につくと、カバンの中にコーヒーとココアの缶がでてきた。
それを見て、なにをやってるんだか……と、僕はひとりごちた。
すっかり冷え切ってしまった缶を手にして
言えなかった言葉をつぶやく。
「風邪、ひかないでね」
その言葉を飲み込んだ。
僕は……
……以上、id:Godkeep さんに壊れた 2 台の iPAQ h1920 を
電脳ジャンパーに身をつつんでもらって
白い巨塔よろしくオペをしてもらうということになった
という話でした。
オペ会場は「参加確率65%の謎の人」迎撃オフ金曜夜の部
詳細は id:kzou さんのページにある
以下のリンクからご確認くださいませ。
オペが失敗した場合は Godkeep さんは
グルーミーよろしく僕に頭からたべられつつ
イージーラーイダーで 50km/h にて爆走の
ぬっころしの刑に処せられるのかな…… ?
無理をいって、iPAQ h1920 の融合修理を頼んでしまいましたが
こころよくお引き受けくださいまして
ありがとうございました。
明日はぬっころしの刑楽しみにしています。
オフ会参加者のみなさま、よろしくお願いします。
